読了

ローマ人の物語 (2) ハンニバル戦記

ローマ人の物語 (2) ハンニバル戦記


おもしい。


私には、カルタゴの抹殺だけは、不必要な蛮行ではなかったかと思う。過去に囚われた強迫観念に
引きずられた、愚行であったと思うのだ。
カルタゴを滅亡させたことでローマが得たものは、二度とハンニバルのような人物と苦闘しなくともよい
という一事にすぎなかった。当時のローマ人にとっては、軽視できない感情ではあったろう。
だが、なぜそれを、五十年も経ってからしなければならなかったのか。それに、古代のアフリカは豊かな地方だった。
その中でもカルタゴは、アフリカの物産の集結地として最適の地であった。しかも、ローマの覇権に異を唱えたのでもなかったのだ。
反旗をひるがえしたのは、絶体絶命に追いこまれたからであり、追いこんだのはローマのほうであった。



(p.381)