読了
- 作者: 塩野七生
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1993/08/01
- メディア: 単行本
- 購入: 7人 クリック: 21回
- この商品を含むブログ (33件) を見る
おもしい。
私には、カルタゴの抹殺だけは、不必要な蛮行ではなかったかと思う。過去に囚われた強迫観念に
引きずられた、愚行であったと思うのだ。
カルタゴを滅亡させたことでローマが得たものは、二度とハンニバルのような人物と苦闘しなくともよい
という一事にすぎなかった。当時のローマ人にとっては、軽視できない感情ではあったろう。
だが、なぜそれを、五十年も経ってからしなければならなかったのか。それに、古代のアフリカは豊かな地方だった。
その中でもカルタゴは、アフリカの物産の集結地として最適の地であった。しかも、ローマの覇権に異を唱えたのでもなかったのだ。
反旗をひるがえしたのは、絶体絶命に追いこまれたからであり、追いこんだのはローマのほうであった。
(p.381)